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new2014 アーキポートセミナー no.6
コンペティション「まほろのオフグリッドハウス」
アーキポート建築家 7組による公開プレゼンテーションの審査発表
 
審査委員5人での意見交換の結果、次の案を選定したことを発表します
(田中 優/赤松佳珠子/岡野祐三/岡野美紀子/岡田雅人)
 
     
 


番場 俊宏 氏「纏う」ように「住まう」

 

 
アーキポートセミナー まほろのオフグリッドハウスコンペティション 審査評
赤松佳珠子  建築家・CAt 代表取締役・法政大学准教授
 

生活と建築は密接に繋がっているにもかかわらず、一般の人たちにとって建築や設計の話はとてもなじみが薄く、建築側の人間とそうでない人たちとの間の深い溝は、なかなか埋まらないと感じている人は少なくないと思います。そこをつなげていく活動を展開しているアーキポートセミナーの第一回建築設計コンペティションのテーマが『オフグリッドハウス』でした。実際に建つ実施コンペとして、これからの未来の住宅の在り方を問うているコンペとして、とても意義の大きなテーマであったと言えます。
今の日本において、オフグリッドハウスとは、ただ単に送電網から切り離されて、電気などを自給している住宅ということだけでなく、意志を持ったライフスタイルだと言えます。もちろん、審査員の一人の田中優氏が岡山の古い民家でオフグリッドの生活を実践されているように、普通の住宅でもそういった生活を送ることは実証されています。しかし、新しく作り出すオフグリッドハウスの提案は、エネルギー問題にどのように向き合い、建築の在り方をどう考えていくのか。そこまで踏み込んで欲しい。その新しい提案が、この先の社会では当たり前に展開し、自由に選択できるモデルとなって欲しいと考えました。

7人の建築家の提案はそれぞれにとても素晴らしく、審査員の意見もなかなか一つの案に収束しませんでした。
以下に、プレゼンテーションの順にそれぞれの案についてのコメントを記します。
(このコメントは、審査員の方々のコメントを総合して記しています。)

1:藤井案
建物の軸を敷地形状ではなく南北に合わせ、太陽光を最大限活用する配置とし、それと同時に敷地全体を空間ととらえることで広がりを生み出している。反面、隣地境界を塀で囲いこむことへの疑問が挙げられた。
2層吹き抜け分の高さのあるガラス引き戸など、明るく開放的な空間の提案で、屋根まで一面ガラスであるところも思い切った提案であり、木製のルーバーで木漏れ日のように外光をコントロールするというところは面白いが、室内温度調整のためのエネルギー面など、現実的には多くの課題も見受けられる。

2:伊藤案
方丈記から説き起こし「21世紀の方丈庵」に住まうという物語性には惹かれた。
今から800年前の社会状況と現代を重ねあわせ、軽やかで生き生きとした生活を実現させる場所としてのオフグリッドハウス。105角の組み材からなる構造、システマティックなパネルの乾式構法化など、単純に建物を組み立てることができるシステムの提案性は東日本大震災を経験した日本社会におけるオフグリッドハウスとして非常に示唆に富んだ内容である。疑問点としては、外壁パネルの性能や、木造の構造体がそのまま外部にさらされている点など、耐久性に対しての指摘がなされたが、今後何らかの形で発展させ、展開していける可能性を秘めた案である。

3:EANA案
東京近郊の敷地に対して都市型の住宅地におけるオフグリッドハウスを作り出す提案。
シンボリックでシンプルな形体で環境に対して機能し、内外をつなぎ、街並みに対して景観を作り出す。個性的で挑戦的な提案であったが、地下をつくり、構造材を鉄骨にし、何層にもわたって庇を廻す方法は、この規模、予算のプロジェクトに対しては少しオーバーアクションであったのではないか。また、ヒートブリッジの問題なども気になるところである。

4:保坂案
緑が多く残る周辺環境の中に、まちに開かれた公園の様な住宅。既成の概念に囚われない柔軟な発想はとても彼らしい提案である。しかし、主要な居室が半地下であることへの疑問、1階に唯一ある2畳の茶室は4周ガラス張りとなっており実際に使われる状態がイメージしにくいこと。また、薄い1Fスラブ(梁)の上に細いフラットバーの柱が建ち、茶室を形成すると同時に、上部の大きなルーフテラスを支えるなど、構造的な不安点も指摘された。

5:番場案
建物の敷地へのレイアウトとデザインが母屋や周辺と調和している点、またオフグリッドハウスの要でもある室温調整の問題をライフサイクルを含め様々に考え直したチャレンジがあり、ライフスタイルや季節や天候などに応じて、軽やかに関係を変えていけるといった提案はこれからの住宅のあるべき姿として高く評価された。しかし、空気の流れを緩やかに遮る障子の間仕切りの性能や構造、建て方のリアリティに対する疑問や、茶室、キッチンなどの各要素の扱いなどの課題も見受けられた。

6:桑原案
狭い敷地を最大限生かして、施主の要望をほとんど実現している案である。そのうえでPS冷暖房、ソーラーパネルのメンテナンス、冬至の陽当たりシミュレーション、木造在来工法での提案など、実際に建てる・住む・使うことをしっかりと考え抜かれた案であり、プレゼンテーションに於いてもその緻密さや信頼性は際立ち、高評価を受けた。しかし、その反面、従来の住宅の発展形にとどまってしまい、オフグリッドハウスとしての新しい住宅の在り方を追及することにまで繋がらなかったのは残念である。

7:町田案
施主要望のポイントである「茶室」の使い方と「茶会の流れ」という点は、7案の中でも最も配慮されている。建物の在り方もきわめてシンプルである。ソーラーパネルを住宅や街から見えるようにすることで情報発信をすると同時にメンテナンス性を考慮した提案は、田中優氏の話にもあるように、望ましいソーラーパネルの在り方かもしれない。しかし、住宅の開口を通り抜けた太陽光が発電に有効であるのか、実際に光が届くのかなど、疑問点も指摘された。

以上のように、7案それぞれに高く評価できる点、また疑問が残る点が指摘され、クライアントの岡野夫妻が実際にどのようにリアリティを持ってこれらの提案の実現に向けて進めていくのか、また将来の新しい住宅の在り方にまで踏み込めているのかどうかなど、多面的な議論がなされました。2転、3転しながらも、最終的に今回のオフグリッドハウスのコンペの意義を再確認し、案の完成度としては一番の優等生ではなかったかもしれないが、一歩踏み込んだチャレンジをし、審査員の一人から『冒険的なやんちゃ坊主』と称された番場案を最優秀とすることになり、桑原案が次点となりました。

新しい住宅の在り方を実践しようと、自邸をオフグリッドハウスというテーマでコンペにするというチャレンジを決意した岡野夫妻、そして、その要望に真摯に答え、自分たちの考えを案にしてぶつけた7組の建築家たち。彼らの真剣な取り組みがこの先の日本の住宅の在り方を示す一つのモデルとなり、アーキポートの今後の活動にもつながっていくコンペだったと思います。

 

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